マイホーム購入は人生のビッグイベント。一生に二度とない大きな買い物です。
金額が大きいのは勿論のこと、家をたてるのには準備期間も含めて相当の時間がかかります。

お金を借りるにしても金額は人生最大でしょうし、家を建ててしまったら最後、建て直すのは難しく、失敗はできません。

家を建ててから「こんなはずではなかった」と後悔することのないように、事前の下準備に慎重になるに越したことはありません。

家造りについてあまり知識のないまま進めてしまうと、建築会社やハウスメーカーにばかり都合が良い家になりかねません。

家造りにおいて重要なのは、よきパートナーに巡り会えることです。

自身が建築家や建築関係者でない限り、住宅の購入者は住宅の素人ばかり。

住みやすい家を作るには、顧客の希望をきちんと形にできる、建築のプロの存在が必要です。

家造りのパートナーに必要なのは、客の希望を組み上げ、形にする提案力や企画力、そして設計通りの住宅を建てられる技術力です。

しかし、このパートナー探しが非常に難しいのが現状です。

ハウスメーカーや工務店は無数にあり、自分の希望を叶えられる建築会社を探すのには相当の労力が求められます。

広告やハウスメーカーから発信されているのは、彼らにとって都合の良い情報ばかりです。

そこから得られる情報だけでは安心できません。良い家造りのためにはより積極的な情報収集が必須となります。

セールストークや偏った広告・宣伝に頼り切りにならず、自分で情報収集をしようという姿勢は立派ですし、重要です。

しかし、誤った情報を鵜呑みにしてしまうとかえって危ないという問題も抱えています。

今回は、家造りのための情報収集の方法と、それに伴う注意点について紹介してゆきます。

住宅展示場の罠
住宅展示場は一種のテーマパークのような場所です。

たくさんのきれいなモデルハウスが並ぶ様子は壮観で、ぶらりと立ち寄ってみても楽しい場です。

注文住宅に興味があるのなら、一度訪れても損はないでしょう。

ただし、本格的に住宅購入を考えていて、これから依頼先を本格的に考えようとしている場合は注意が必要です。

住宅展示場に並ぶモデルハウスは、おそらく一度は耳にしたことがあるような有名なハウスメーカーのものばかりです。

立ち並ぶ住宅はどれも非常に立派です。どの家も広々とした大きなもので、内装も設備も豪華なものばかりです。

中には、狭小住宅専門のハウスメーカーが建てたこじんまりした家もありますが、有名所のモデルハウスはどれも立派です。

住宅展示場にはたくさんのハウスメーカーが集まっています。来場者は、そこに建てられたモデルハウスを見比べて、どこのハウスメーカーの話を聞くか決定します。

モデルハウスの中に入ってもらい、そこで説明を聞いてもらうためには、目を引くようなモデルハウスでなければなりません。そうした競争が続いた結果、住宅展示場のモデルハウスは豪華なものばかりになってしまったのです。

当然、モデルハウスのような立派な住宅は現実的ではありません。そんな家が建てられるのは一部の大金持ちだけです。

実際の家造りでは、限られた予算の中、以下に住宅を理想の形に近づけていくかの試行錯誤です。

しかし、モデルハウスの豪華さに惑わされてしまう人は少なくありません。そのまま依頼先をよく検討しないまま決めてしまう人もいます。

住宅の実物を見られる機会だという点においては、住宅展示場は重要な場です。ハウスメーカーが一箇所に集まっているため、色々と見比べることもできます。

モデルハウスを見て回るのは楽しく、家造りのモチベーションアップに繋がる部分もあります。

しかしだからこそ、実際の住宅とはギャップがあるという冷静な心を忘れないでいて欲しいのです。

もう一つ注意しておきたいのは、住宅展示場にモデルハウスを建てられるのは、大手だけだということです。

モデルハウスを建てるのには非常にお金がかかるため、宣伝費用に余裕のない小さな会社は手が出せません。

住宅展示場は地元の工務店や建築家を探す場にはなりません。

ハウスメーカーの営業
住宅展示場で注意が必要なのは、モデルハウスの豪華さだけではありません。

営業のセールストークに載せられないことも大切です。

ハウスメーカーにとっての家造りは、客に来てもらい、話を聞いてもらうことにあります。

そのため、モデルハウスの見た目だけでなく、あの手この手で誘い込もうとしています。

例えば、粗品を配布したり、キャラクターを使って子どもの気を引いたり、風船を配ったりなどしています。

モデルハウスの中に入ると、今度はアンケートに答えることになります。

アンケートに回答すると、家造りのための書籍が貰えたり、洗剤などの粗品が貰えたりなどの特典があることもあります。

無料で何か貰えるとなると、訪れた人はついついアンケートに答えてしまいます。

このアンケートは、そのハウスメーカーが客を選別するために行われます。

アンケートでは、現在の家の状況(築年数や広さなど)から、家族構成、年齢、職業や年収に至るまで、非常にプライベートな物事まで聞かれます。

なぜそんなプライベートなことを知りたがるのでしょうか。

それは、家を建てられそうな人かどうかを知るためです。

収入や職業を聞くのは住宅ローンが組めるかどうかを知るためで、見込みがなければもう客ではないと判断される可能性が非常に高いです。

また、ハウスメーカーにも、高級な路線から低価格住宅まで様々な種類があります。

モデルハウスを訪れた人が、そのハウスメーカーで家を建てられる人かどうかの見極めをしなければ、セールストークの時間も無駄になってしまいます。

収入や予算だけでなく、土地の有無で対応が変わることもあります。

土地を所有しておらず土地探しから行わなければならない場合、提携の不動産会社を紹介して、まずは土地を探すように誘導されることもあります。

また、ローコスト系の注文住宅を扱うハウスメーカーでは、土地を持たない客をやんわり断るようにマニュアル化している会社も存在します。

土地探しの分だけ時間がかかるため、すぐに契約が取れず、お金が入るまでも時間がかかる客、とみなされるためです。

土地を所有していても、土地の形状や周囲の状況か考慮に入れられることもあります。

インターネットで簡単に衛星写真が見られる時代です。住所さえわかれば、どんな土地を所収しているのか簡単に知ることができます。

土地の広さは十分か、足場や重機を入れるための余裕や道路幅はあるかなどがチェックされます。

そのハウスメーカーの採用している構法や工事が難しそうであれば、これもやんわり断られる原因になります。

このように書くと、ハウスメーカーは冷たい・意地悪だと感じるかもしれません。ある意味ではその通りです。

そもそも、ハウスメーカーはそのメーカーの規格に合わせた住宅をたくさん建てることで成り立っています。

規格を揃えれば、建築コストを抑えることができ、品質も保ちやすくなります。

効率化によって浮いたお金で、モデルハウスを建てたり、広告を出したり、研究開発に当てたりしています。

土地が狭かったり、変わった形状の家を望んでいたりなど、規格に合わない住宅を建てるのは、ハウスメーカーのビジネスモデルに合わないのです。

ハウスメーカーの方から断られたり、避けたりされるのは不快かもしれませんが、どのみち話を聞いてもらった所で相性が悪いのは明白です。

満足できるような住宅は建てられないでしょう。

営業の印象
ハウスメーカーを選ぶ際に、営業の印象だけで決めてしまうという人も中にはいます。

優秀と言われる営業は話がうまく、印象も非常に良いです。せっかく話を聞いてくれたのだからと、運や後ろめたさを感じて依頼先を決定してしまう人もいます。

確かに、ハウスメーカーで家を建てるのであれば、営業は非常に重要な存在です。

客と現場・設計者・インテリアコーディネーター等をつなぐのは営業の仕事です。営業が無能だと、客の要望が設計者に上手く伝わらず、専門家の意見が客に伝わりません。

ですから、営業の印象が悪い、相性が悪いと感じたのであれば、そのハウスメーカーは避けるべきです。

しかし、営業が優秀だからと言って、技術力のあるハウスメーカーだとは限りません。

比較の対象にはなりますが、ここを重要な決定打としてしまうのは危険です。

また、セールストークの中で「キャンペーン」や「期間限定」などの言葉が多用されている場合も注意しましょう。

人はキャンペーンという言葉に弱いもので、今決めないと損をすると思うと、焦ってしまいがちです。

決断を急かすのはものを売る上でのテクニックではありますが、安価な商品ならまだしも、高額な住宅で決断を急がせるのは悪質だと言っても良いでしょう。

中には期間限定を謳いながら1年中キャンペーンを行っているような会社もあります。

家造りはじっくりと行うべきものであって、一時の焦りや人間の印象だけで決めてしまうものではありません。

もし、家に営業に来た人や住宅展示場の営業が「キャンペーン」という言葉を使って急かしたとしても、一旦時間を置き、冷静になってよく考えてみるべきです。

ネットで情報収集する
スマートフォンでいつでもどこからでも情報収集ができる時代です。レストランを探すのと同じように、気軽に家造りのパートナー探しもできてしまいます。
GoogleやYahoo!で検索しても良いですし、ハウスメーカーや工務店をリストアップして紹介しているサービスもたくさんあります。

問題は、たくさんありすぎることです

検索の際は、どんなキーワードを入力すれば良いのでしょうか?

家造り? 注文住宅?

キーワードが単純でありふれているほど、大量の検索結果が表示されることでしょう。

何か具体的なビジョンや希望が決まっていても、それを上手くキーワードにして検索結果を絞り込んでいくのは案外むずかしいものです。

そもそも、家造りを始めたばかりの人では、どんな言葉で表現したら良いのかさえ分からない部分も多くあります。

どうにかハウスメーカーや工務店をいくつかピックアップできたとしても、そこからの比較もハードルが高いです。

公式サイトに書かれているのはそのメーカーにとって都合の良いことばかりで、書き方も非表現の方法もバラバラです。単純に読み比べるだけでは、素人に良し悪しは判断できません。

そこでおすすめなのが、専門家によるハウスメーカー紹介サービスです。

以下に紹介するスーモカウンターで、私は実際に家を建てることになった地元の工務店を紹介してもらえました。

書籍や雑誌で調べる
雑誌や書籍の場合、記事を書くライターの他に編集者が存在します。

一つの記事が複数の人の手によってチェックされるため、比較的公平性・正確性の高い媒体です。

特に建築や家造りそのものについてまず勉強したいという場合は、専門的な書籍・雑誌を何冊か読んでみるのがおすすめです。

ただ、一部の書籍・雑誌の中には記事そのものが広告だということもあります。

価格の高い専門誌ではなく、比較的安価な家造り素人に向けた雑誌にはそういった記事が多いです。

一般的な雑誌などとは異なり、出版する側が取材して掲載するのではなく、ハウスメーカーや工務店がお金を出して「載せてもらっている」記事です。

住宅展示場やwebで手に入るような情報が、紙媒体になっただけ、というものも少なくありません。

単なる広告ばかり掲載された雑誌にお金を払うのは馬鹿馬鹿しいため、購入前に内容をざっとチェックしておくようにしましょう。

また、雑誌や書籍の場合、取材しやすい首都圏ばかりが取材先になりやすい傾向にあります。

都市部と郊外では住宅事情が異なるため、地域によっては全く参考にならない可能性があります。

雑誌の好みと依頼先
家造りを始めたばかりの頃は、自分が何を重視しているのか、どこをこだわりたいのかさえ自覚できないこともあります。

大手のハウスメーカーを探すべきなのか、それとも建築家を探すべきなのかで、情報収集の方法も変わってきます。

一つの指標になるのが、住宅専門誌の好みです。

「HOUSING」に載っているような、具体的で現実的な家造りを考えているのならハウスメーカーが向いています。

「住まいの設計」に掲載されているような、個性的で楽しそうな住宅が気になるのなら、柔軟な設計や自由設計を売りにしているハウスメーカーや工務店がおすすめです。

「住宅特集」にあるような、スタイリッシュでかっこいい住宅に憧れているのであれば、建築家に依頼してみましょう。

これらはあくまでも一つの目安ですが、雑誌を見て自分好みの住宅を色々と探しているうちに、だんだん具体的なビジョンが見えてくるはずです。

注文住宅と建売住宅
さて、新築物件には注文住宅の他に建売住宅があります。

土地を一緒に探している場合、注文住宅だけでなく、建売住宅も選択肢に入るでしょう。

基本的に、建売住宅の方が注文住宅よりも安いです。

これには、いくつか理由があります。

まず、建売住宅は注文住宅以上に規格が決まっているためです。

同じような形・間取り・内装の家をまとめて建てられるため、建材をまとめて仕入れたり、効率的に工事が進められたりします。

また、建売住宅は売れなければ利益を確保できず、赤字になってしまうため、早く売るために安くなることがあります。

毎回違う家を建てる注文住宅とは異なり、工事もやりやすく、注文住宅よりも技術力のない工務店が工事を請け負っていることもあります。

注文住宅であれば、工事中に現場を見学して、作業の具合を確認できますが、建売住宅ではそれもできません。

加えて、建売住宅の購入は注文住宅よりも購入の選択を急かされやすく、失敗しやすいのも難点です。

良い建売住宅を見極めるためのコツの一つは、誰が販売しているかをチェックすることです。

建売住宅を扱っているのは、主に不動産系の会社と建築系の会社の2つです。

建築系の場合、工事は自社かその下請けが行っています。

建築が本業であるため、構造や構法・機能や技術についても自社で把握しています。品質も期待できます。

注意が必要になるのは、不動産系の会社が扱う建売住宅です。

建築に対する知識が浅く、下請けの工務店に対する監視も甘い可能性が高いです。

工事を手がける工務店も、下請けしかできないような所である場合もあり、技術力や質にはばらつきがあります。

住宅の機能や構造について営業に質問しても、はっきりと答えられないようであれば要注意でしょう。